2019年3月28日木曜日

もっと日本語を勉強したい、でも生活費が足りず”労働力”に…留学生たちを取り巻く厳しい実態

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190325-00010003-abema-soci
3/25(月) 、ヤフーニュースより
 「自動車の学校に入りたいけど、日本語力が足りないので、東京福祉大学で一生懸命頑張りたい」。来月入学予定のネパール人留学生の男性が期待に胸をふくらませる一方、進学先の同大で約1400人の留学生が所在不明となっていることが報じられている。ここで言う「所在不明」とは、大学での活動実態が3か月以上ないことを指す文部科学省の基準だ。
 大学側によると、2018年度の留学生700人が所在不明で、2016年度からの3年間で約1400人の留学生が所在不明を理由に除籍処分になっているといい「留学生の親御さんの希望で日本に子供を留学させて勉強とアルバイトを期待している場合が多いようだ。母国に給料の良い仕事がないという背景がある」としている。また、来なくなった学生に対しては電話連絡や自宅訪問を実施、母国の親に連絡するといった対応もしてきたとして、「本学では本来なら大学合格が難しい、成績が悪かった学生をたくさん救ってきた。そのような救った学生に裏切られた形だ」ともコメントしている。
 一方、この3年間で留学生の受け入れを急激に増やしてきた影響からか、王子キャンパスでは教室が銭湯の2階にあることや、教員数や授業数が少ないという指摘もある。現役留学生からは「先生方はあんまり教えられない。私のクラス(授業は)週3回だから。もっと勉強したかった」(ネパール出身)、「(自分のクラスは)今は20人くらい。最初は30人。(10人くらいは)来なかった」(カンボジア出身)といった証言も聞かれた。
■非漢字圏の学生にとって難しい日本語習得
 留学生の受け入れ事情に詳しい東京工業大学の佐藤由利子准教授は「留学生はまず最初に日本語能力を身につけないと、進学や就職に続いていかない。そのための勉強とアルバイトのバランスがすごく難しい。特に非漢字圏の学生にとって、漢字はすごく難しく、日本語の習得にすごく時間がかかる。日本語学校は2年までしかいられないが、アルバイトをしているために日本語の勉強が十分にできない場合もあり、終了段階で大学に入れるくらいの日本語力がついていない人は行き先がない。そういう学生にとっては、この東京福祉大学の研究生制度のニーズはあったと思う。東京福祉大学の場合、大学に入れるくらいの日本語能力がついていない人が学部研究生として入り、足りない部分を勉強するという建前の制度だった」と話す。

 この「研究生制度」とは、学部進学希望者が1年間、日本語、日本文化などを学ぶもので、授業は週10時間以上の科目を選択履修する。学費は入学金10万円、授業料など52万8000円(一次出願者が一括納入の場合)だという。

 「ただ実際のところ、彼らを救うような教育内容が提供できていなかったのではないかと思う。ちゃんと勉強するということを前提に留学ビザを出しているということもあり、入管のチェックは厳しく、留年もできない。加えて学費がすごく重い。来日前に海外で払ってしまうので、日本のクーリングオフ制度など、消費者保護の対象外でもある。それだけに、きちんとした教育を提供してほしいという気持ちは日本人よりもよっぽど強いと思う。経済発展している中国出身の留学生は親からの仕送りが多い場合もあるが、非漢字圏のベトナムとかウズベキスタン、ネパールなどは元々所得水準が低く、仕送りも少ない。そのためにアルバイトで生活費や授業料を稼いでいる人が多い」。
■「これ以上働くと、大学の勉強時間が減ってしまう」
 では、実際の留学生たちの状況はどうなっているのだろうか。

 東京福祉大の現役留学生に話を聞くと「居酒屋さんでバイトをしている。1週間で26時間くらい。アルバイトの目的は自分の生活費」(ネパール出身)、「居酒屋でアルバイトをやった。1週間で28時間くらいやる。日本のルールを守るので。留学生は生活費が大変。学費もあるし、電話代とか、生活費とか。1か月の給料は12万円ぐらいでちょっと生活が大変。だからみなさん(授業を)サボってみなさん仕事だと思う」(ベトナム出身)といった声が聞かれた。
 番組に生出演してくれた日本映画大学4年制の叶凌峰(25)さんは「アニメが好きで、日本の映画界に入りたくて来た。今は撮影の勉強をしていて、卒業したらカメラマンを目指して頑張っていく」と話すが、「日本に来てからはアニメを見る時間が全部バイトとか授業を受ける時間になっている」と苦笑する。「昔は週3~5回、ドラッグストアでアルバイトをしていたが、今は安定的な仕事がない。たまにその日だけやるみたいな感じ。メチャクチャ節約して、自分で頑張って乗り越えるが、どうしても生活費が厳しい時は親に送ってもらうこともある」と話す。月の収入は12万円(内アルバイト代12万円)で、支出12万円だという。

 また、ウズベキスタンからの留学生で、文化学園大学1年生のクバン・セルゲイさんは週あたり24時間、土曜日も含めて週に4回ほど、荷物運びのアルバイトをしているというが、収入17万円(内アルバイト代10万円)に対し支出は20万円以上になるため、親の支援が欠かせない。「これ以上働くと、大学の勉強時間が減ってしまうから、そこはバランスが必要だと思っている」。

 留学生などを対象とした日本語学校「青山国際教育学院」の村上誠学院長は「日本に進学するというのはアジアの方々の一つの夢になっている。多額のものはいらないが、もう少し安心して勉強できるような形の奨学金を出してもらうのがいいのではないか」と話す。
■背景に政府の「留学生30万人計画」?
 政府が推進する、2020年を目途とする「留学生30万人計画」の骨子には「大学など教育研究の国際競争力を高め、優れた留学生を戦略的に獲得する」とあり、去年5月時点での留学生は29万8980人に達する。

 ジャーナリストの堀潤氏は「“失踪“という言葉は大学側に責任がないような印象を与えると同時に、まるで学生が悪いような言い方だ。受け入れ側の仕組み杜撰さはなかったのか。今回のケースは氷山の一角だと思う。経営難の大学が留学生を“集金マシーン“のように見ていたり、企業が大学をハローワークの代わりに使ってるような側面はないだろうか。文科省の責任もあると思う。大学を増やす・増やさないの議論もあるが、短大も含めて、大学のそろそろ整理する時期に来ている」と指摘する。

 こうした指摘に対し、佐藤氏も「“卒業までにここに到達しないといけない“という目標があれば、そこを目がけて勉強するが、教育面が緩いというか、留学生にとって満足できない大学だと来なくなってしまうということもある。大学も淘汰される時代に入っていると思うし、生き残りに必死で留学生を集め、あまり勉強をさせないといったケースは昔からあった。18歳人口が減って、大学や専門学校の経営が厳しくなっているところも多いので、他にもないとは言えない。貴重な人材として育てていかないといけないので、国としても教育内容をチェックするといった管理が必要だ」との認識を示す。

 「留学生30万人計画は高度人材の受け入れと連動していて、日本に働きに来る人は必ずしも多くないので、留学生として来てもらって日本語を勉強し、日本文化を理解し、専門的知識も身につけて、日本に残ってもらうという人材獲得の政策でもある。しっかり教育するということと表裏一体なので、教育をしていない大学が出てくると破綻してしまう。“ワーク・スタディ・バランス“をしっかり取れるように助言してあげないといけない」。
来月1日には改正出入国管理法が施行され、新たな在留資格「特定技能」1号・2号が導入される。1号に一定の技能があり、在留期間は通算5年、家族の帯同はできない。対象として想定されている職種には、介護、ビル清掃、建設、農業、漁業、航空、外食、宿泊など14職種がある。2号は熟練した技能があることが条件で、在留期間は更新可能、家族の帯同もできる。

 「私はすごく期待している。留学生の中には、日本のアルバイトですごく時給がもらえるということでそちらが中心になってしまったりしている人もいる。色々な職場で人手が足りないので、留学生のアルバイト頼みみたいなところが増えている。特定技能1号・2号ができると、14業種では労働目的の外国人を受け入れられるので、留学生のアルバイトに頼らなくてもいい。また、海外の人が日本に行くことを選ぶ時に、特定技能の枠ができれば、働く目的であれば留学ではなくてそちらで行こうとなる。より純粋に勉強したい留学生が増えると期待している」(佐藤氏)。

(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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