2019年3月19日火曜日

「ネパールタウン」化する新大久保の奥の奥に潜入してみた

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190316-00063362-gendaibiz-int
3/16(土) 、ヤフーニュースより
----------
最貧国のひとつとされるネパールでは、国外によりよい仕事や生活を求める人が後を絶たない。日本にやってくるネパール人も多く、現在東京に住むネパール人は8万人を超えるといわれている。

コンビニエンスストアやスーパーマーケットのレジで、きっと知らぬ間にネパール人に出会っている人もいるはず。TRANSIT43号では、そんな意外な繋がりのあるネパールを特集。インドと中国という大国に挟まれ、ヒマラヤ山脈に抱かれた小国の現状とは。
そして、日本在住のネパール人たちは2国間でどのような生活を送っているのだろうか。その実態を探るべく、東京のリトルネパールでビジネスを営む男性を取材した。
文:櫻井 卓 写真:飯坂大
----------

「コリアンタウン」から「ネパールタウン」へ
 東京にリトルネパールとでもいうべき場所がいくつかある。新大久保、高円寺、阿佐ヶ谷、荻窪など新宿を中心にしたエリアだ。とくに新大久保は、ネパール系のお店の数が40を超える。料理店やスパイスショップはもちろん、ダンスバーなんてものまであるのだ。

 東京に住んでいるネパール人は2万7827人(2017年調べ)。そのうち3811人、約13%が新大久保のある新宿区に集中している。

 「新大久保は今徐々に、コリアンタウンからネパールタウンに生まれ変わってきています」

 そう教えてくれたのは、新大久保を拠点に幅広いビジネスを展開しているバニヤ・ローサンさん。

 彼が日本にやってきたのは、今から15年ほど前。渋谷にある日本語学校に入学したのがはじまりだ。そこを卒業した後はITを学ぶために専門学校へ行き、日本のIT 企業に就職した。

 しかし、あまりの忙しさに限界を感じ、一度ネパールへ帰国する。

 「僕はほんとに日本が大好き。娘の名前もMAYUMIにしちゃうくらい。だから、日本で何かできないかと思って、もう一度チャレンジすることにしたんです」

日本は「時間の捉え方」がまるで違う
 彼の一日は起きてすぐのお祈りからはじまる。窓際の小さな祭壇に祀られているのはガネーシャラクシュミー。それぞれ商売と豊かさを司るヒンドゥー教の神だ。

 訪れたのは彼の新大久保の仕事場。高円寺にも家があるが、仕事が忙しくなるとここに泊まりこむ。彼のメインの仕事はカトマンズにある日本語学校の運営。そこを経営しつつ、ビザの取得など日本でのネパール人の受け入れ事業も行う。

 「だから日本とネパールを行ったり来たりです。今はインターネットがあるから、どこにいても仕事ができるから、いいですよね」

 朝食を終えると、真っ先にカトマンズへインターネット電話をかけて、家族とコミュニケーションをする。その後はカトマンズの日本語学校へ電話し、さまざまな打ち合わせを。カトマンズの彼の学校に通う生徒は現在約30人。これまで600人以上のネパール人を日本に送り出してきた。

 「たくさんのネパール人を日本に連れて来たいんです。僕自身、日本でたくさんのことを学びました。とくに考え方ですね。仕事に取り組む姿勢はネパール人と日本人ではまったく違います。

 あとは時間の捉え方。ネパール人の合い言葉、『ビスターレ・ビスターレ(ゆっくり、ゆっくり)』は、もちろん素晴らしいと思いますが、仕事でまでビスターレはちょっとね(笑)」
ネパール人が母国に帰っても働ける場所を
 インタビューする間も、彼の2台の携帯は鳴りっぱなしだ。それもそのはず、本業である日本語学校や、日本での受け入れ先の調整などのほかにも、新大久保にある複数のレストランの株主としての顔ももち、カトマンズではパン屋をオープン予定。ほかに、カフェやリゾート開発の計画などもあるという。

 「1日200本くらい電話しますね。僕はあまり深く考えないです。とりあえずやってみる。考えすぎると動けなくなりますから」

 バニヤさんはいわゆるハイブリッドワーカー。いろんな職業を同時にこなす最先端の働き方をしているのだ。

 「やりたいことはまだまだたくさんあります。たとえば観光業。日本でしっかりと日本語を覚えた後、その人たちがネパールでも働ける場所をつくりたいので、ネパールに日本人向けのホテルを建てるという計画もあります。あとは日本人の教師や技術者をネパールに連れて行って、IT 系の専門学校もつくりたい」

ネパールをよくしたい。だからお金を稼ぐ
 昼食は、自分が投資しているネパール料理店でとることが多い。この日もそのうちの1軒を訪れて、遅めの昼食。その間も携帯電話は鳴りつづける。

 「ダルバート(カレー風味の野菜のおかずを中心としたネパール版の定食)はいいですよ。サッと食べられて、すぐにお腹いっぱいになりますから。片手で食べられるから、携帯電話で喋りながらでも大丈夫。行儀は悪いですけどね(笑)」

 日本で活躍するバニヤさんだが、その根底には“ネパールをよくしたい”という思いがある。

 「日本で通用する人材をネパールで育てることができれば、その人たちが帰ったときに、もっとネパールを発展させられるかもしれない。

 僕は基本的にいいことをしたいんです。でもそれをするには、やはりお金を稼がないといけない。ネパールにはそういう考え方をする人がとても少ない。技術や知識なんかも、もちろんだけど、お金を生み出すビジネスをつくる方法を日本から学び取ってほしいんです」

 じゃあ、また人に会う用事があるのでここで。そう言って手を合わせると、バニヤさんは颯爽と新大久保の雑踏に吸い込まれていった。

 ビスターレ・ビスターレ。ネパール人の合言葉は今の彼には必要ないのだ。
TRANSIT編集部

0 件のコメント:

コメントを投稿