2019年3月12日火曜日

中学生がアメリカで保護され…「意識高い系バックパッカー」は何が危険?

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190310-00131251-bizspa-life
3/10(日) 、ヤフーニュースより
 古くはバックパッカーのバイブルとされる『深夜特急』(沢木耕太郎)『何でも見てやろう』(小田実)などのルポルタージュ、最近ではブロガーやインフルエンサーの旅ブログに影響されて一人旅に出る若者は後を絶たない。

 しかし気をつけたいのが、海外への憧れが先走ってしまい、一人旅の危険性やリスクを意識しないまま出かけてしまうことだ。

 最近でも、高校生バックパッカーがビザを持たずにネパールに不法入国した挙げ句、日本に強制帰国させられたり、中学生の“意識高い系”YouTuberがヒッチハイクでアメリカ横断に挑戦したものの、ラスベガスで保護されてしまったケースもある。2人とも「海外で自分探し」といった自己啓発本や“意識高い系”インフルエンサーの影響を色濃く受けていたようだ。
中学生ヒッチハイカーが「絶対ダメ」な理由
 もちろん、危険を顧みない一人旅は自己責任の世界であり、外野がとやかく口出しするべきでない。しかし、ひとつ間違えれば、未成年が危険な事件や事故に晒されかねないのだ。

 これまで海外61か国を旅し、現在は金融系大企業を退職してフリーの“旅ブロガー”として活躍するマリさん(@makiro77)に話を聞いた。

「今回の騒動を初めて知ったとき、まず彼の大胆な行動自体に驚きました。そのうえでどのような背景があるのかよくわからなかったのでSNSで多くの方のコメントを拝見しました。そして、これは危険だ、やめたほうが良いと思いました」(マリさん、以下同)

 特に「中学生がアメリカで一人ヒッチハイクは絶対ダメ」だとか。

「海外で見ず知らずの人と車で2人きりになるのは、大人のバックパッカーでもほとんどやりません。ヒッチハイクするにしても、もっと治安の良い地域でじっくり計画を立ててするべきです。

 日本と比べて海外で強盗や殺人などの重犯罪に遭遇する確率は何十倍も高い。南米での強盗、殺人は日常茶飯事で、私の夫の母国ブラジルでは2017年の殺人事件は5万5900件。もちろん人口に比べたら稀ですが、日本では毎年1000件程度ですから実に56倍です。ご両親がどういった思いで送り出したのか気になりますね。リスクをどの程度想定していたのか聞いてみたいです」
旅のプロに聞く「一人旅」危険回避する方法
 もちろんなかには精神的に成熟した中学生もいるため、海外への一人旅が一概に危険とはいえない。マリさんも「年齢はひとつの目安にすぎず、成熟していないなら、一人旅は何歳になっても危険を伴います」と言う。

 何より「可愛い子には旅をさせよ」ということわざのように若い頃の苦労は貴重な成長の糧だ。では、ここからは旅のプロとして、マリさんに危険回避方法を伺おう。

「バックパック旅行でもっとも遭遇する可能性が高いのはスリ、置き引き、詐欺、ぼったくり。少し治安の良くないといわれている場所ではかなり高い確率で遭遇します。また、女性だとセクハラや性犯罪に巻き込まれるリスクも高くなります。南米など特定の国でアジア人女性はとても目立ちますし、ノーと言えない日本人の性格は世界的にも有名。毅然とした態度で接することが大切です」
100回海外旅行しても一人旅は数えるほど
 また、一番の回避方法は単独で行動しないことだという。

「100回近く海外旅行をしている私でも、一人旅は数えるほどしかしていません。ソウル、ニューヨーク、台湾など治安が良いと言われている都市以外は必ず友人か家族と行動しています。

 理由は万が一、何かあって次の旅に出られなくなると困るからと、複数より一人のほうが狙われやすいのは確実だからです。旅慣れていないのであれば、まずはツアーに参加したり、友達との旅で経験値を積んでからひとり旅に出発するのもテです」

 また、マリさんの友人の旅ブロガーのツイートにこんな一文がある。

「昔読んだ国際協力の本に、海外支援で一番大事なことは『自分が死なないこと』だと書いてあった。一人が死ねば、海外渡航そのものの是非が問われ、ルールが厳しくなる。余計自由に旅できなくなる。勇敢と無謀は似ているようだけど、全然違う」(「Yoshi

ただの旅と写真好き」ツイートより)

「その通りだとうなずきました。最大のトラブル回避方法は、事前にその国で起こる可能性のある事象を把握しておくことです。私が頼りにしているのは『地球の歩き方』といったガイドブック。そのうえで、現地を実際に旅した人のブログをチェックし、外務省が用意している海外安全ホームページを確認した後、外務省が運用する海外安全情報メール配信サービス『たびレジ』に登録しておけば完璧です」
外務省ホームページの情報は意外と使える
 最新の国際情勢は外務省のホームページで確認するのがおすすめなのだそう。

「今まで治安が良いとされていた北欧などの国でも近年、治安の悪化が進んでいることがわかりました。過去のイメージや、他人から見聞きした情報だけで旅行をするのも不安です。常に情報はアップデートされていて、みなさんが思ってるより外務省ホームページもずっと有益だと感じています」

 最後に、マリさんは今回の騒動を受けて、海外一人旅に関心がある若者に、マイナスなイメージが広がらないか危惧しているという。

「今回の騒動と同時期に、ポンチョ系女子大生(クラウドファンディングで世界一周の資金集めをしていた女子大生)も話題に挙がっていましたが、本当に彼女たちのことを心配している声と、ただ叩きたいだけの声が混じっていた気がします。後者のせいで、真面目な忠告まで、本人の耳に届かなくなってしまうのが一番残念です」

経験値を上げながら自分なりの旅を楽しんで
 世界一安全と言われる日本から海外に一歩出れば、危険が増すのは確実。リスクをゼロにすることはできないが、冒険がしたいなら、それなりの準備が必要だ。

「今の時代、海外の情報はネットを使っていくらでも手に入ります。情報を収集したうえで、実際に旅に出て、たくさん失敗すればよいと思います。若者が好奇心、探求心を持つことに大人が口をはさみ過ぎるのは反対。

 とはいえ一口に海外といっても情勢はさまざまですので、安全な国からスタートする、ツアーに参加するなどのステップを踏んで、経験値を上げながら彼らなりの冒険を楽しんでくれることを願います」

 一歩間違えれば命を落とす危険もある海外旅行。「自分探し」で命を落とさないためにも、くれぐれも無茶だけはしないでいただきたい。

<取材・文/シルバー井荻>
bizSPA!フレッシュ 編集部

0 件のコメント:

コメントを投稿