2020年8月21日金曜日

中国共産党による香港弾圧に「53カ国が賛成」の衝撃=立沢賢一【週刊エコノミストOnline】

 Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/aeb9064befb8203875ae2332b8162673752f5191

配信、ヤフーニュースより

サンデー毎日×週刊エコノミストOnline

◇香港国家安全維持法が確実に機能するために、中国共産党は何をしたのでしょうか? (1) 2020年2月13日、中国共産党は習近平国家主席が浙江省党委員会書記を務めていた2003年、同副書記に就任し、キリスト教教会の屋根の十字架を全て強制撤去するなどのキリスト教抑圧策で知られ、習氏の片腕とも言われている夏宝竜を、国務院香港・マカオ事務弁公室トップに充てました。 これによって、香港情勢の立て直しを図り、中国共産党政府の関与を強めようとしていると報じられました。準備万端な中国共産党は取締りのための幹部人事を迅速に公表しています。 (2) 香港国家安全維持法を適用するや否や早速、逮捕者を出し、民主化運動の火種を排除しました。 香港政府は前哨戦として、2020年4月18日、現職の梁耀忠立法会議員や「民主の父」と呼ばれるマーティン・リー元議員ら15人を逮捕しました。15名には民主化運動を支持しているメディア界の大物でアップル・デーリーを創業したジミー・ライ氏も含まれています。民主化運動を抑え込もうという中国共産党政府の意志の強さは強烈で、それを実行する手段が新法の条文から把握できます。つまり、香港での民主化運動や中央政府批判などの活動は厳格に規制され、当局は中国共産党政府の法解釈で、関係者を容易に拘束できる仕組みが作られているのです。 この法律の内容が運動家らに与える恐怖感、威圧感は圧倒的であり、民主化運動家らが生命の危険を感じて姿を消すのも当然です。ですから、中国共産党政府が手を下すまでもなく、反中運動が消えていくことが予想されます。 それほどまでに香港国家安全維持法の内容は民主化の動きを封じてしまう危険性を濃厚に感じさせるのです。 6香港の民主派団体「デモシスト」のアグネス・チョウ氏とジョシュア・ウォン氏の様な民主化運動家らが生命の危険を感じ、団体から離脱する以外に手段がないと判断せざるを得なかったことも理解できます。

実際に、アグネス・チョウ氏とジョシュア・ウォン氏は2020年6月30日、それぞれのSNSで団体を離脱することを表明しました。 詳しい理由は明らかにされてませんが、同日に全人代で香港国家安全維持法が可決されたことで、団体に残留することで自分達や他のメンバーが逮捕されるリスクを避けるための決断という可能性が考えられます。 アグネス・チョウ氏が配信したTwitterの最後に「生きてさえいれば希望はあります」というメッセージがありましたが、その言葉が全てを物語っているように思えます。 国家安全維持法は、香港の自由を支えてきた英植民地時代からの判例法主義の法体系や、様々な自由を保障する香港基本法と根本的に対立するものと言えます。 このままだと香港は中国本土の都市と変わらないと世界から見做されてしまうでしょう。 ◇第44回国連人権理事会で香港国家完全維持法の賛否が問われる さて、スイス・ジュネーブで2020年6月30日、第44回国連人権理事会が開催され、国家安全維持法に関する審議が行われましたが、国家安全維持法に反対したのは僅か27カ国、対して支持した国はその約2倍の53カ国でした。 国家安全維持法に反対したのは、英国、フランス、ドイツ、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、オーストリア、スロベニア、スロバキア、アイルランド、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ラトビア、エストニア、リトアニア、ノルウェー、スイス、リヒテンシュタイン、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、パラオ、マーシャル諸島、ベリーズ、日本の27カ国でした。 ちなみに米国はトランプ政権になって以降、同理事会から脱退しています。 賛成に回ったのは中国、キューバ、ドミニカ、アンティグア・バーブーダ、ニカラグア、ベネズエラ、スリナム、カンボジア、ミャンマー、ラオス、スリランカ、ネパール、パキスタン、タジキスタン、イラン、イラク、クウェート、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、バーレーン、オマーン、イエメン、シリア、レバノン、パレスチナ、エジプト、モロッコ、スーダン、南スーダン、エリトリア、ジブチ、ソマリア、ニジェール、ガンビア、シエラレオネ、トーゴ、ギニア、ギニアビサウ、赤道ギニア、ガボン、カメルーン、ブルンジ、中央アフリカ、レソト、コンゴ共和国、モーリタニア、レソト、トーゴ、ザンビア、ジンバブエ、モザンビーク、パプアニューギニア、コモロ、ベラルーシ、北朝鮮の53ヶ国でした。

反対している国々を見ると、2つの特徴が窺えます。 1つ目は、それらの国々が中国と同じように独裁的、もしくは権威主義的で、イスラム過激派のような反政府勢力の問題を国内に抱えていることです。 エジプトやイラン、パキスタン、シリア、サウジアラビアなどはイスラム過激派など反政府組織の問題を抱えています。新疆ウイグルをめぐる中国国内情勢は、これら国々と状況が類似していて、国家体制を維持するため、市民への統制を緩めることが出来ず、反政府組織に対しては厳しく抑圧するという共通点があります。 2019年7月にも、今回と同様に国連人権理事会の加盟国である英国や日本など22カ国が、新疆ウイグル自治区での人権侵害で中国を非難する共同書簡を提出しましたが、ロシア、北朝鮮、パキスタン、シリア、アルジェリア、サウジアラビアやエジプトなど37カ国は中国を擁護する立場をとりました。 2つ目は、一帯一路による莫大な資金援助の影響です。 エジプト、イラン、パキスタン、シリア、サウジアラビアも事情が似ているかもしれませんが、今回の52カ国には、カンボジア、カメルーン、モザンビーク、ミャンマー、ネパール、ラオス、パプアニューギニア、スリランカ、ザンビア、ジンバブエなど多額の資金を中国から受け取っている国々が含まれています。中にはすでに債務超過状態に陥り、返済すらままならない国もあります。そういった国々は、国内でインフラ整備や都市化を推進するためにも、中国支援の立場を取らなければいけないという政治的プレッシャーがあると考えられます。 また、中国との貿易関係が深まっているアフリカや中南米の国々は、香港問題への興味や関心が希薄で、経済的パイプから中国共産党政府の意向に忖度していると言われています。 理由はともかく、国連人権理事会という公の場で、参加国の2倍あまりの国々が、力尽くで中国が制定した香港国家安全維持法に賛成するという現実があるのです。

香港国家安全維持法は、一国二制度を当初の取決めより27年も早く終焉させ、北京の中国共産党政府が香港を実効支配するという法律なのです。それにも拘らず、国連人権理事会で香港国家安全維持法の賛成派が過半数を超えているのは、中国共産党の狡猾さによるものではないかと思われます。 ◇反対する世界各国はどう対応しているのですか? 米中覇権戦争のもと、米国は香港国家安全維持法に対する制裁措置を既に開始しています。 2020年7月1日、米下院は香港自治法案を満場一致で可決し、同年7月14日にトランプ大統領が署名し同法は成立しました。香港自治法は、香港の民主化デモの取締りに当たる中国当局者と取引する銀行に罰則を与えるという内容です。 イギリスは最大300万人の香港市民に、イギリスでの定住と、最終的に英市民権を申請する機会を与える方針だとしています。 オーストラリアもまた、香港居住者に安全な避難先を提供することを「積極的に検討」していると伝えられています。スコット・モリソン首相は、「間もなく内閣で検討される」案が複数あると表明しています。 カナダは2020年7月3日には香港と結んでいた犯罪人引き渡し条約の停止と、香港で民主化デモの弾圧に使われる可能性がある「軍民両用」製品を含む軍事物資の輸出禁止を発表しました。 ◇香港国家安全法施行に関する個人的見解 中国・武漢から発症したと言われている新型コロナウイルスが未だ世界に恐怖を与え続けており、中国共産党は世界中の国々から非難を受けています。その様な環境下に、中国共産党は自国を更に世界から孤立化させてしまうような香港国家安全維持法をなぜこのタイミングで制定したのかが、非常に重要なポイントです。 中国共産党が世界を敵に回してまで、香港国家安全維持法を香港に強要するのは、「お家事情」があるからではないかと思います。 恐らく、日本人の我々が想像する以上に、中国国内で内乱やデモは多発しており、中国共産党は是が非でも民主化運動を制圧する必要性を感じているのでしょう。

その為にも、2020年9月6日に予定されている香港立法会選挙で民主派議員が過半数を獲得する様な事態を回避しなければならないのです。 大衆の民主化機運を抑えることが最優先課題である中国共産党にとって、香港国家安全維持法は政権維持の為に、絶対的に必要不可欠な法律なのです。 ■立沢賢一(たつざわ・けんいち) 元HSBC証券社長、京都橘大学客員教授。会社経営、投資コンサルタントとして活躍の傍ら、ゴルフティーチングプロ、書道家、米国宝石協会(GIA)会員など多彩な活動を続けている。投資家サロンで優秀な投資家を多数育成している。 Youtube https://www.youtube.com/channel/UCgflC7hIggSJnEZH4FMTxGQ/ 投資家サロン https://www.kenichi-tatsuzawa.com/neic

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