Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/4ecec049dbfd024aac4441ad3cd415747ebe16c3
どこの街に住むかの選択は、仕事やプライベートに大きな影響を与える。さらに家賃が家計支出の大きなウェイトを占めることを考えると、居住地は資産形成までも左右するといえる。総合的に考えて住みやすい街はどこなのだろうか? 20代後半から30代前半の単身会社員の住み心地を考えていこう。今回取り上げるのは、JR山手線「新大久保」。 【ランキングをみる「興味ある街」】
新大久保が「コリアンタウン」になるまで
「新大久保」は東京都新宿区に位置する、JR山手線の駅です。1日の乗車人数は5万弱。山手線駅の単独駅は、ほかに「目白」だけです。 駅があるのは新宿区百人町。その地名は、江戸時代、防衛のために「鉄砲組百人隊」が配備されたことに由来します。また百人町の東にあるのが大久保。地名の由来は、かつて大きな低地=窪地があったからなど、諸説あります。 今でこそ24時間営業の店が多く、国際色豊かな街となった新大久保ですが、終戦までは華族や実業家の邸宅が並ぶ高級住宅街として知られていました。また小泉八雲や国木田独歩、島崎藤村など、多くの文人も住居を構えていたことでも有名です。街の歴史を伝えるものとしては、ギリシャで生まれ、大久保1丁目で終焉を迎えた小泉八雲の「小泉八雲記念公園」があります。 大久保の街は、東京大空襲で全域が壊滅。その後、1950年、駅近くロッテ新宿工場が誕生します。山手線に乗っていると「チューインガム」という大きな看板が見えた光景を覚えている人も多いかもしれませんが、ロッテ新宿工場は2013年に閉鎖。2017年に取り壊しになりました。 多国籍化の第一歩は、ロッテ新宿工場の誕生よりもさらに前の1935年。新大久保の隣、北新宿に「国際学友会」が設立され、留学生の受け入れの窓口になりました。そのため、周辺に多くの留学生コミュニティーが作られたのです。さらに1983年、当時の中曽根首相が「留学生10万人計画」を打ち立てたことで、新大久保から高田馬場のエリアに、日本語学校など外国人向けの専門学校が増え、多国籍化に拍車がかかります。 また歌舞伎町に隣接するという場所柄、ラブホテル街が形づくられたりと、街は独特な雰囲気を醸し出すようになります。
そんな新大久保に最初の韓流ブームが起きたのは、2003年頃。NHKでドラマ『冬のソナタ』が放映されると、中高年を中心にブームは加熱。新大久保のコリアンタウン化が進みます。 2010年頃にはK-POPの流行で、再び韓流ブームに。その後、ブームは下火になりましたが、2016年頃から韓国コスメが注目されたり、チーズダッカルビやチーズハットグなどの韓国グルメが話題になったりすると、第3次韓流ブームが到来します。再び街は活気づきました。 コリアンタウンの側面に注目が集まりがちですが、昨今の新大久保は多国籍化がさらに進行。駅西側にはハラルショップやトルコ料理店、ネパール料理店などが集まる「イスラム横丁」と呼ばれる一角が誕生。同じく駅西側、JR中央・総武線「大久保」駅までの間はチャイナタウン化したり、さらにその南側、「一番街」と呼ばれるエリアには、ベトナムやタイなどの飲食店が集まっています。 ある意味、東京で最もグローバル化を果たし、最先端の街といえる新大久保。今後もこの街の変化に目が離せません。
新宿に隣接…利便性は高いが住むなら治安の確認を
多国籍タウン「新大久保」駅周辺の家賃相場をみていきましょう。駅から徒歩10分圏内の1Kの平均家賃は9.14万円、11分を超えると10.6万円(図表1)。駅から離れると専有面積の広い物件、築年数の浅い物件が増えるため、家賃水準が高くなる傾向にあります。同条件の東京都新宿区の家賃水準は、駅10分圏内で8.67万円、11分を超えると7.91万円。「新大久保」駅周辺の家賃相場は、新宿区平均を大きく超える家賃水準のエリアです。 厚生労働省が発表している「賃金構造基本統計調査」によると、都内勤務の男性会社員の平均月給は、25~29歳で27.5万円、30~34歳で34.1万円です(図表2)。企業規模によって平均給与は異なりますが、そこから住民税や所得税などを差し引いた手取り額の1/3以内を適正家賃と考えると、都内勤務20代後半は6.9万円、都内勤務30代前半は8.5万円です。 「新大久保」駅周辺の家賃相場は、一般会社員の適正家賃を大きく超えます。しかし大手検索ポータルサイトで、徒歩10分圏内を条件で検索してみると、30代会社員の適正家賃内で多くの単身者向け物件を見つけることができます。しかし新築や築5年以内の築浅物件も多い一方、専有面積が10~15㎡と狭いものがほとんど。家では寝るだけなど、居住性を犠牲にしてもいい人向けの物件です。
交通面はどうでしょうか。JR山手線で「新宿」2分、「高田馬場」2分、「池袋」7分(所要時間は「新大久保」を平日8時に出発した場合の目安)。「新大久保」は山手線のみの単独駅なので、沿線以外へのアクセスは乗換えが必須になりますが、ターミナル駅経由で都心主要エリアには30分程度でアクセス可能です。また居住エリアによっては、東京メトロ副都心線「東新宿」も利用できるでしょう。 買い物環境はどうでしょうか。駅周辺には「業務スーパー」「まいばすけっと」「miniピアゴ」と小型スーパーがあるほか、大手ドラッグストアチェーン店や「ドン・キホーテ」なども。また徒歩でも新宿にアクセスできるエリアなので、最寄り品はもちろん、買回り品の購入でも困ることはありません。 飲食店はどうでしょうか。駅周辺には、気兼ねなく利用できるファストフードやファミレス、牛丼店、定食店など、大手飲食チェーン店があるほか、一人利用もOKな飲食店が多数集積。韓国料理をはじめ、中国料理、タイ料理、ハラルフードと、種類も豊富。飲食店の数では都内でも有数の規模を誇る街なので、オンでもオフでも食べるところで困ることはないでしょう。 コリアンタウンの印象が強い「新大久保」は、日本有数のターミナルである新宿に隣接しているため、利便性ではピカイチのエリアです。しかし懸念されるのは、街の安全性。そこで警視庁が公表している犯罪認知件数を見てみましょう(図表3)。 新大久保駅の南は百人町1丁目、北が2丁目、駅を東に行った南が大久保1丁目、北が大久保2丁目になりますが、犯罪件数の多い新宿区のなかでも、すべて上位にランクイン。また、犯罪件数こそ繁華街の新宿3丁目がトップですが、百人町に隣接する歌舞伎町の凶悪犯、粗暴犯の多さには、目を見張るものがあります。 新大久保の独特な空気は魅力的ですが、多国籍化の進む多くの街が苦慮しているのが、自治会内でのコミュニケーション。文化の差から生じる隣人トラブルなどには気を付けたいものです。 新大久保は、都内で最もインターナショナルなエリアのひとつです。その雰囲気に惚れ込んだ人であれば、住む価値のある街ではないでしょうか。
GGO編集部
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