Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/6e772b1f9e641e3ccf3fad8af110548ced7968c9
佐々木正明さんが推薦中(CNN) ケニア、ネパール、タジキスタンをはじめ世界各地から来た捕虜たちは話す言語も違えば、文化も違うが、共通する点が一つある。それは、ロシアにだまされて、望まない戦争に参加させられたと証言していることだ。 【写真特集】ウクライナの収容施設内の捕虜、他3枚 ウクライナ政府の捕虜問題調整本部によると、37カ国からやってきた200人近くの外国人がロシア側として戦っている最中に捕らえられ、ウクライナに捕虜として拘束されている。これらの人々の証言は、ロシア政府が外国人を自軍に誘い込むために用いているとされる詐欺、賄賂、恐喝の実態を浮き彫りにしている。 ウクライナでの戦闘に自国民を参加させることに苦慮し続ける中で、ロシアは軍を補強するため外国人への依存度を高めている。 ウクライナの捕虜本部を率いるドミトリー・ウソフ准将によると、ウクライナが特定した、ロシア側で過去に戦ったか現在戦っている外国人は128の国と地域出身で1万8000人あまりに上る。この人数には、軍事協力協定の一環として派遣された数千人の北朝鮮兵は含まれていないという。外国人の実際の人数はこれをはるかに上回る可能性が高い。 ウクライナで戦闘に加わる外国人の増加を受け、最近、複数の国がロシアに対し、自国民の徴兵を停止するよう強く働きかけている。 南アフリカ政府は、ウクライナ東部ドンバス地方(その大部分はロシア軍の支配下にある)から帰国の助けを求める救難信号を発した17人の自国民が、どのようにして戦争に加わることになったのか調査すると発表した。 この翌日にインド外務省報道官は、自国民44人がロシア側で戦っているとし、インド政府は「ロシア当局に対し、彼らの早期釈放とこうした慣行を終わらせるよう改めて求めている」と述べた。インド当局は人々が「だまされて入隊させられる」ことを防ぐ措置を講じているという。 ウクライナ国防情報総局はCNNに対し、ロシアが2022年初頭に全面侵攻を開始して以降、ウクライナの前線で発見される外国人の数は年々増加しているが、今年は特に大幅な増加がみられると指摘した。今年1~9月の間にウクライナ軍の捕虜となった外国人の数は、昨年1年間の倍に上り、昨年は23年の5倍に達したという。 ロシア政府はこれまで、外国人に入隊を強要しているとの見方を否定している。
毎日平均約1000人が死傷
ロシアもウクライナも死傷者数を公表していないが、ロシア政府は今年に入り、最も基本的な死亡率や人口統計データの公表さえ停止した。アナリストらは、戦争による実際の犠牲を覆い隠すためだと指摘する。 一方で西側諸国の情報機関は、ロシアの死傷者数は22年2月以降、25万人以上の死者を含め100万人以上に上るとみている。英国防情報部の最新の推計によると、毎日平均約1000人のロシア兵が死傷しているという。 この驚くほど高い死傷率のため、ロシアは新たな人員の供給を絶えず必要としている。あらゆる兆候が、入隊を希望するロシア国民の急減を示しているにもかかわらず。 ロシア大統領府(クレムリン)は、22年9月の部分動員の失敗を受け、新たな動員の呼びかけに慎重だ。当時は部分動員に恐れをなした数十万人のロシア人男性が国外に逃れた。ロシアは深刻な人口動態の圧力にも直面している。国連は、ロシアの人口が2100年までに25~50%減少する可能性があると予測している。 ロシアの多くの地域では、新規入隊者への支給額を大幅に引き上げている。アナリストらは、この動きについて「イデオロギー的」な入隊キャンペーンだけでは足りないことを示していると指摘する。
恐喝、賄賂、詐欺
ウクライナの前線にも外国人が存在することは公然の事実だ。ウクライナは開戦以降、外国人義勇兵を募集しており、特別部隊も編成している。ウクライナは所属する外国人の情報を公表していないが、その数は数千人規模に上るとみられる。英国や数々の欧州諸国を含む多数の国が、自国民に対し入隊を控えるよう明確に警告しているにもかかわらず。 人権監視団体が支持するウクライナ側の評価によると、同国のために戦う兵士たちは自発的に決断を下した可能性が高い一方、ロシア軍に所属する外国人の多くはそうではない。 ウクライナ国防情報総局の関係者はCNNに対し、ロシアの外国人募集戦略は、恐喝、賄賂、そして詐欺の三つに集約されると語った。 ロシアのビザや居住許可、ロシア国籍の保証、あるいはそれらをはく奪するという脅迫は、同国がより多くの戦闘員を募集しようとする上で重要な手段となっている。 ウクライナ国防情報総局の関係者によると、ウズベキスタン、タジキスタン、キルギスといった中央アジア諸国からロシアに移住した人々の場合、移住を理由とした入隊が最も多くみられるという。 クレムリンは最近、兵役と引き換えに外国人がビザやロシアのパスポートを取得しやすくした。一方でプーチン大統領は昨年、国籍取得したロシア国民が兵役登録を怠った場合、国籍をはく奪できるようにする法律に署名した。 人権団体によると、ウクライナ侵攻前夜には、入隊に同意しなければ収監や国外追放の脅迫を受けたと証言する中央アジア諸国出身の戦闘員が多くみられた。 ロシアはこの慣行を否定していない。ロシア捜査委員会は5月、ロシア当局が最近国籍取得したものの兵役登録を逃れたロシア国民8万人をすでに「摘発した」と明らかにした。ロシアのメディアグループRBCが報じた。これらの新たなロシア国民でウズベキスタン、タジキスタン、キルギス出身の2万人が現在、最前線にいるという。
ロシアに連れてこられる外国人
多くの他国出身の男性がロシア国内にいながら強制的に軍に入隊させられている一方で、兵役のためロシアに連れてこられた人々も少なくないようだ。 情報戦研究グループ「オープンマインズ」によると、外国人に的を絞り契約兵役をうたう広告の数は、今夏以降7倍超にふくれあがっている。 オープンマインズがロシアで最も人気のあるSNS「フコンタクテ」のコンテンツを新たに分析したところ、25年半ばまでに軍事契約を訴求する広告の3分の1が外国人向けになった。1年前はわずか7%だったという。 これらの広告には、新兵が突撃部隊に配属されることはなく、生命の危険が少ない特定の任務に配属されるという保証が含まれていることが多い。 CNNが独占入手したデータによると、広告の約半分は旧ソ連構成国出身でロシア語を話す外国人を対象としており、残りはアフリカ諸国、インド、バングラデシュ、イラク、イエメンなどを対象としている。特定の国に言及していない広告はごくわずかで、6分の1程度だ。 開戦当初、外国人の間で軍事契約への関心は低かったものの、ロシア語検索エンジン、ヤンデックスのデータによると、旧ソ連構成国における軍事契約の検索シェアは24年に10倍に跳ね上がった。今年も増加が続く見込みだという。 広告のメッセージはターゲット層によって異なる。 オープンマインズによると、ロシア語の広告の多くは、社会保障や金銭的利益に加え、ロシアのパスポート取得支援を約束している。 CNNが確認したテレグラムチャンネルは、アラビア語圏の人々を対象としていた。傭兵(ようへい)志願者に対し、ロシアビザの迅速な取得、2000~2500ドル程度の月収、無料の医療、さらに生活費全額負担をうたっている。 中国人が署名したロシア軍の契約書には、3年間の兵役後に無料の教育を受けられることや、「食事、衣服、その他の物資」をロシアが負担することなどが含まれている。 その代わり、契約書に署名した兵士は、「戦闘への参加、動員期間中や、緊急事態下、戒厳令発令時、武力紛争勃発時における任務の遂行、国際平和と安全の維持・回復のための活動、またはロシア領外での国際テロ活動への参加」に同意することになる。 ウクライナ当局者らは、同国が捕らえた外国人の中には契約書の内容を理解せず、翻訳も提供されないままロシア語の契約書に署名させられたと話す者もいると語った。 ウクライナの捜査官に証言した捕虜たちは、1~2週間の戦闘訓練を経て前線に送られ、大きな危険を冒してウクライナ軍陣地を襲撃する突撃部隊に加わることも多かったと語った。死者数は驚異的だ。ウソフ氏によると、ウクライナが確認できた1万8000人あまりの外国人のうち、少なくとも3388人は死亡した。 ウクライナ政府は、ロシア側で戦う外国人や、不本意ながら入隊したロシア兵を対象に、降伏すれば安全な避難場所と捕虜の地位を提供するという特別プログラムを開始した。
存在しない「建設業」
広告の中には、募集されている仕事内容について比較的透明性の高いものもある。ロシアの突撃部隊や戦闘員の写真が掲載されているのだ。しかし、そうでないものもある。 ウクライナ国防情報総局の関係者によると、捕虜の一部は、建設業、倉庫作業、警備員、運転手などの仕事だと約束されてロシアに来たと話した。これはスリランカ、キューバ、ネパール、一部のアフリカ諸国といった、ロシアから遠く離れた低所得国出身の捕虜に最もよくみられるケースだという。 ケニア外務省は今月初め、海外での仕事を装って自国民を戦闘に送り込む人身売買組織を摘発したと発表。ロシアから救出された他の国民も、仕事の内容について正しく伝えられず、ドローンの組み立てや化学物質の取り扱いといった危険な仕事に就かされたという。 ネパールは、多数の国民が偽の口実で勧誘されロシアの戦争に参加させられたと述べ、ロシア政府に対しこの慣行の停止を求めた。ネパールは昨年、自国民が就労目的でロシアまたはウクライナに渡航することを禁止する措置に踏み切った。 ウソフ准将は今週、この措置が功を奏したと明らかにした。「23年から24年にはネパール国民約1000人がロシア軍と契約を結んだが、25年は10月1日時点でロシア軍に入隊したのは1人だけだ」






