Source:https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2021091800467
県内小中学校で2学期が始まってほぼ1カ月。新型コロナウイルスの感染防止策を取り、授業が続いている。子どもたちが楽しみにしている給食の「進化」が著しいことが、県内19市教委などへの取材で分かった。一食当たり250~350円ほどだが、栄養士や調理員の熱意で工夫する例が多い。多様性を増している現状を紹介する。前編では地域独自の活動や名物料理にちなんだメニューを…。
■地域独自の活動と連携
ネパールの家庭料理「ダルバート」。ご飯やカレーを一皿で楽しめる定食のような存在という。駒ケ根市は2017年度から年1回、給食で出している。国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊訓練所がある縁がきっかけだ。
17年に同国を交流のために訪問した中学生の提案で始まった。同訓練所のネパール語講師が、学校給食センターの栄養士らに調理方法を教えた。ご飯にカレー、野菜のあえ物を一皿に盛り付け、スパイスを利かせる。市教委によると「(国際協力友好都市の)ネパールのポカラ市を知るきっかけになった」「食文化の勉強になった」との反応があり、子どもたちの成長の「栄養源」になっているようだ。
鹿肉のコロッケやカレーを給食に出すのは長野市。中条地区に整備した県内最大級の野生鳥獣解体処理施設「市ジビエ加工センター」が20年度に本格稼働。センターの経営を安定化させることと、子どもたちに、ジビエ(野生鳥獣肉)を山の恵みとして伝えることも狙う。
20年11月に初めて「鹿肉シチュー」を提供した中条小と中条中の子どもたちへのアンケートでは、「おいしい」が小学生の95%、中学生の79%に達した。
ほかに、佐久市の薄味の長寿食にちなんだ「ぴんぴんキラリ食」、千曲市の市内産ワインを風味付けに使った「鶏肉の千曲ワインソースがけ」の例もある。
■名物料理も多様に
「うなぎのまち」の岡谷市は年1回、「うなぎ給食」を保育園と小中学校で出している。03年に始まり、最近では冬場の脂の乗ったウナギをPRする市発祥の「寒の土用丑(うし)の日」にちなみ1月中下旬から2月ごろに、うなぎ料理店などでつくる「うなぎのまち岡谷の会」が調理するのが恒例になっている。同会から安価で提供されているため、高級食材を給食で味わえるという。
ご当地グルメ「美味(おい)だれ」を活用したのは上田市。ニンニク入りのしょうゆベースのたれをからめた「鶏肉のおいだれ焼き」がメニューに並ぶ。須坂市は、地元料理「みそすき丼」を給食向けにアレンジしている。
■給食多様化のわけは
県教委によると、09年の学校給食法改正が、地域色豊かなメニューが提供されるきっかけの一つになった。学校での食育推進が明記され、「伝統的な食事や地域の食材を使ったメニューを意識して出すようになった」。その結果、県内各地で取り組まれるようになったという。
塩尻市の木曽楢川小学校のランチルーム。1年生7人が協力して配膳し、「いただきます」とあいさつした。和風スパゲティー、バンバンジーサラダなどを、「黙食」し始めた。表情はうれしそう。食後に「おいしかった」と笑顔を見せていた。
キムチとたくあんを混ぜる給食「キムタクごはん」を発祥させた同市。地元の漬物「すんき」の「すんきチャーハン」などを給食メニューに加えてきた。木曽楢川小の子どもたちが使う食器は、特産の漆器だ。ともに6年生の宮原大輔さんは「漆器はどの料理にも合うので素敵」、巣山真里菜さんは「他では使っていないと知って、すごいとうれしくなった」。
地域の特色を食で伝える―。そんな思いを込めたメニューが、子どもたちの昼の時間を彩っている。(山本公太)
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20日に後編を公開しました。伝統野菜を給食に出す地産地消のほか、多様な献立をつくる悩みも紹介します。
【進化する給食】(下)
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