2019年4月23日火曜日

4月から入園&職場復帰したが、発熱で連日呼び出し…集団生活の「通過儀礼」に親子で備えるには?

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190421-00010000-yomidr-sctch
4/21(日) 、ヤフーニュースより

坂本昌彦 「教えて!ドクター」の健康子育て塾
 4月になりました。幼稚園、保育園に通い始めているお子さんも多いかと思います。それに合わせ、育児休業明けで職場復帰される保護者の方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

 私の診察室にも、入園したばかりのお子さんがちらほら。早速、熱を出し、保育園からの連絡で迎えに行き、病院に連れて来た……という保護者もいます。

 それまで一緒にいたお子さんと日中離れることの寂しさ。保育園で病気をもらうことへの不安。仕事への期待と不安。特に初めての子育てだと、色々な思いが胸中を巡っていらっしゃるかもしれませんね。

 そこで今回は、職場復帰と子どもの病気について書いてみたいと思います。
毎週のように熱を出し、ほとんど通えない子も
 保育園や幼稚園は、子どもたちの集団生活の場です。それまで、ときどき子育て広場に連れていっていたとしても、園での集団生活となると、他の子どもたちと一緒に過ごす時間は格段に長くなります。新しく入園する子にとっては、初めて多くの病原体にさらされることになります。中には毎週のように熱を出し、入園したのにほとんど通えないお子さんもいます。

 朝、元気に園に送り出し、「さあ仕事を頑張るぞ」と思った矢先、職場に「昼寝後からお子さんに熱があるのでお迎えをお願いします」という園からの連絡。「やっと仕事に戻ったばかりの大事な時期に!」というやり場のない怒りと、「またか……、なんて思ってしまう自分は、親として失格かもしれない」という悲しい気持ち。「子どもが熱を出したのは、自分が仕事復帰したせいじゃないか」という自責の念があるかもしれません。
保育園、幼稚園の通過儀礼 免疫をつけるため
 でもこれは、集団の中でたくさんの病原体にさらされることが原因で、いつかはわが子も集団生活を経験しなくてはいけない以上、必要な免疫をつけるために避けて通れないことです。私たちは外来で、「保育園・幼稚園の通過儀礼ですね。みんなが通る道ですよ」とお話ししています。決して保護者の皆さんの判断が悪かったわけでも、保育施設のせいでもありません。

 何度も風邪を繰り返すわが子を前に、「何か免疫の弱い病気なのかもしれない」と心配になって病院を受診される保護者もいます。もちろん、ご心配であれば日中にご相談いただければと思いますが、大多数は免疫の病気ではなく、風邪を繰り返しながら色々な抗体を作れるようになる過程です。お子さんは、そうやって少しずつ病原体と闘う力がレベルアップしていきます。次第に風邪を引く頻度も減っていきます。
「予防接種」と「かかりつけ医」を
 そんな保育施設の通過儀礼への対策として、2点お勧めしたいと思います。

 まずは、早めに予防接種を済ませること。1歳になると、ヒブ・肺炎球菌・4種混合・麻疹風疹混合・水痘など、様々な予防接種をすることになります。任意接種ですが、おたふく風邪もぜひ接種しておくことをお勧めします。仕事復帰すると、つい予防接種のスケジュールを忘れがちになるものです。日本小児科学会が勧める予防接種スケジュールを目安とするのもいいでしょう。実際に接種する際には、かかりつけの医療機関とご相談ください。

 次に、あらかじめかかりつけ医を決めておくことです。かかりつけ医があれば、急な病気などでもすぐに相談することができます。小児科だけでなく、耳鼻科や皮膚科、歯科なども探しておけば安心です。もっとも、子どもの病気について、どの科を受診すればいいか迷った場合は、小児科にご相談いただいても大丈夫です。
「親が迎えに行けないとき」の方法を用意
 保護者の側の備えも必要です。お迎えに行くのはお母さん、という決まりはもちろんありません。「保育園の通過儀礼」は子育ての一大事ですので、お父さんも協力していただければと思います。

 お父さんの育休をいつ取るのか、という話にもつながりますが、お母さんの職場復帰に合わせて取得するのも一つの方法かもしれません。ただし、自治体によっては、お父さんが育休を取ると保育園を退園になってしまうところもあるので注意が必要です。子育てしやすい環境をつくるためにも、こうした制度も少しずつ変わっていくといいなと願っています。

 親がどうしてもお迎えに行けないこともあります。そんな時のために、代わりをお願いできるルートを、あらかじめ用意しておくことをお勧めします。夫婦で対応できないときに頼むのは、「もちろん祖父母でしょ!」という声が聞こえてきそうですが、ちょっと立ち止まってみましょう。

 今は祖父母世代も仕事を続けていることが多く、世代間で子育ての価値観が違うこともあります。そこで考えておきたいのが、自治体が設けている「ファミリーサポート制度」や「病児保育」への登録です。個人的には、子どもが熱を出したときには「お互いさま」の精神で、職場を早退したり休んだりしたりしやすい雰囲気があれば一番いいなと思っていますが、頼れる選択肢をできるだけ増やしておくことで安心できます。
朝、熱が下がっていても…
 一般的に、熱は午後から夜にかけて高くなり、治っていなくても朝は低くなる傾向があります。したがって、前の夜に熱が出ている場合は、朝、熱が下がっていても、午後から再び高くなる可能性が結構あります。登園の判断としては、「前日の夜に熱があったときは休む」と決めておいた方が、結局、連日呼び出しのストレスも軽減でき、お子さんが早く治ることにもつながります。
何もしないで15分、ハグの時間
 環境が変わることで、お子さんが不安になっているようなら、こんな方法はいかがでしょうか。私が以前、知人から聞いたアイデアなのですが、「帰宅後15分は、何もしないで子どもをハグしてお話をする」と決め、タイムスケジュールに入れておくのです。あらかじめスケジュールにあるので、「夕食が」「お風呂が」と気持ちが焦ることもありませんし、必ず家族との時間があるのでお子さんも安心します。

 職場復帰で大変な保護者の皆さんを、少しでも応援できればと思っています。
坂本昌彦(さかもと・まさひこ)
 佐久総合病院佐久医療センター・小児科医長
 2004年名古屋大学医学部卒。愛知県や福島県で勤務した後、12年、タイ・マヒドン大学で熱帯医学研修。13年、ネパールの病院で小児科医として勤務。14年より現職。専門は小児救急、国際保健(渡航医学)。日本小児科学会、日本小児救急医学会、日本国際保健医療学会、日本国際小児保健学会に所属。日本小児科学会では小児救急委員、健やか親子21委員。小児科学会専門医、熱帯医学ディプロマ。現在は、保護者の啓発と救急外来の負担軽減を目的とした「教えて!ドクター」プロジェクトの責任者を務めている(同プロジェクトは18年度、キッズデザイン協議会会長賞、グッドデザイン賞を受賞)。

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