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RKB毎日放送
いま、日本には340万人の外国人が暮らしていますが、そのうち、留学生や、技能実習生の多くは20代です。 【写真で見る】国内外のさまざまな避妊具と高向教授らが作成した教材 避妊法の違いや妊娠したときの選択肢など、正しい知識を得てもらおうという取り組みが進められています。 ■留学生のための性教育 きっかけは”孤立出産” 福岡市の西日本短期大学で留学生たちに日本語を教えている高向有理教授です。 この学校で日本語を学んでいる留学生の多くは、ネパール、ベトナムから来ています。 高向教授らの研究チームは、留学生のための性教育の教材を開発しました。 きっかけになったのは、日本で孤立出産した技能実習生が、死産した赤ちゃんを遺棄したとして刑事罰に問われる事件が相次いだことです。 いま、福岡地裁でも妊娠したことを周りに告げることができず孤立出産した、20歳のベトナム国籍の技能実習生の刑事裁判が続いています。 西日本短期大学 高向有理 教授(59)「誰にも助けを呼べずに一人で出産するというような想像しただけでも壮絶な経験をしてますよね。私も裁判を傍聴に行きましたが、本人も知っていたら病院に行っていたんじゃないかって」 ■「コンドームは無料でもらえるのに・・・」戸惑う留学生 背景にあるのは、母国と日本とで、用いられている避妊法や、受けられるサービスに違いがあることです。 ベトナムからの女子留学生(19歳)「避妊法は女の人は経口避妊薬とか。経口避妊薬は安くないけど高くはないです。千円くらいあれば買うことができる」 ネパールからの男子留学生(24歳)「妊娠したくないときは、コンドームが健康ポスト(自治体の診療所)で無料でもらえます」 ■日本はコンドーム一択 海外は安価で豊富な選択肢 国連の調査によると、日本では、避妊している40%のうち、ほとんどが男性用コンドームを使用していますが、ベトナムでは子宮内に入れる器具「IUD」や経口避妊薬が多く使われ、ネパールでも手術や注射といった、女性が主体の避妊法の割合が大きくなっています。
腕に挿入すると3年から5年の間妊娠しないインプラントは、日本では未承認ですが、海外では多くの国で使われています。 日本では、経口避妊薬のピルも緊急避妊薬も医療機関による処方箋が必要です。 費用も、ピルで数千円、緊急避妊薬では一万円を超えるところもあり高額です。 さらに中絶となると、経口中絶薬であっても入院を要するなど経済的な負担が大きいのが現状です。 日本語学校の留学生や技能実習生の在留資格では家族の滞在を認めていません。 出産後半年は、赤ちゃんにも在留資格が許可されますが、更新されないので、帰国するか親に預けるということになります。 西日本短期大学 高向有理 教授「勉強、留学とか、仕事とか、達成したいことがあって日本に来るんです。それを遂行するために気をつけなければいけないことっていう情報が、正しい情報が伝わっていないので、どこに行けば避妊具が入手できるかとか、そういったこともあまりよく分かっていない状況なんです」 ■「妊娠したらどうする?」留学生向けの教材を開発 国連のユネスコ=教育科学文化機関は、科学的根拠に基づいて包括的な性教育を進めるようガイダンスを作っています。 高向教授らの研究チームは、留学生向けに実践的な教材を開発しました。 タイトルは「日本での妊娠と出産」~ライフプランを考えよう~ 様々なケースが設定され、どう対応したらいいか授業で話し合いながら理解できるように構成されています。 例えばこんな感じです。 ジェイさんとリナさんは大学生です。今日、リナさんが妊娠していることがわかりました。 リナさんはまず、どこへ行ったらいいですか? (1)学校 (2)くすり屋 (3)病院 リナさんはこれからの生活が心配です。誰に相談したらいいですか? (1)学校の先生 (2)友だち (3)誰にも言わない 産みますか?産みませんか?自分たちで育てますか?国の家族に育ててもらいますか?妊娠をやめますか?【妊娠をやめるとき】日本では、自分で薬を買って中絶するのは禁止です。堕胎罪に問われます。 妊娠したくないときは? 避妊をする(3つの方法) (1)コンドーム (2)ピル (3)緊急避妊薬(72時間以内に病院で ※店では買えません)
■大切なのは”女性が決める”権利 いちばん大切なことは、リプロダクティブヘルス&ライツ、=性と生殖に関する健康と権利です。 つまり、妊娠、出産、避妊、中絶にかかわることについて、自分が決める権利を持っているということです。 2022年、国連人権委員会は日本に対し、包括的性教育を推進するよう勧告しましたが、政府は、「妊娠の経過を取り扱わない」という学習指導要領に沿って性教育を実施しているとして、「受け入れない」と回答しています。 日本の性教育では性交や避妊・中絶については教えないのです。 ■日本の性教育「極めて遅れている」 高向教授と共同研究をしている上智大学の田中雅子教授は、海外の事情と比較して日本の性教育の遅れを指摘します。 上智大学総合グローバル学部 田中雅子教授(57)「私たちは義務について学ぶことは多くても、権利について学ぶということがないまま大人になっているので、まず人権全体が教育されておらず、さらにその中で生殖や性の権利となると、ほぼ口にすることもないように大人になっていくのが普通なので、日本は極めて遅れている国のひとつだと思います。ヘルスサービスに関しても、日本はベトナムやネパールから来た人は、日本以上に選択肢がないところから来てるって勝手に思い込んでいますけど、まったく逆なんです」 さらに国連人権委員会は、中絶や避妊薬についても購入可能な価格帯で入手できるよう勧告しています。 日本での人工妊娠中絶数は2022年は12万2725件です。田中教授は、妊娠しても出産に至っていないことについても、自己決定の権利意識の低さが影響しているとみています。 上智大学 田中雅子教授「中絶しやすくなるのは、実際に少子化とか晩婚化といわれている話と矛盾しているようにみえて、多分、根っこのところは一つで、自分が自己決定したい、だから今、こういう選択をしたいということが言えなくて、予定外の妊娠をしてしまうぐらい避妊に関して知識がない。その延長線上にいつなら妊娠しやすいかという知識もないことに繋がるので、やはり性と生殖に関する教育自体が欠けているのが大きいと思います」
RKB毎日放送 大村由紀子
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