2020年3月11日水曜日

国語はすべて「ア」と回答せよと指導も…外国籍生徒、受験に日本語の壁〈AERA〉

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200305-00000019-sasahi-soci
3/7(土) 17:00配信、ヤフーニュースより
AERA dot.
 中国、ネパール、フィリピンなど、多国籍の生徒が学ぶ日本語指導の現場。日本語指導が必要な生徒に支援が行き届いていない実態が問題視されている。AERA 2020年3月9日号では、日本語指導が必要な児童の進学の実態について調査した。

【日本語指導が必要な児童生徒数はこちら】
*  *  *
 たぶんかフリースクール(東京都荒川区)は、学齢超過の子どもの高校受験を支援する数少ない組織だ。中国やフィリピン、ネパールなど多国籍な学生が毎年50~60人学んでいる。

 授業は1日5時間、週4日間実施される。日本語だけではなく、高校受験を見据え、数学や英語の授業もあるが、国語の授業はない。必要がないのではなく「お手上げ」なのだ。

「国語はほとんど点数が取れません。理科や社会も難しいです。日本語で問われるため、学力とは関係なく、点数をとることができません」(枦木さん)

 東京都では入国後の在日期間が3年以内の外国人生徒を対象とした、面接と作文のみで実施する特別枠の入試とは別に、来日6年以内で日本語指導を必要とする生徒には、国籍を問わず試験問題にルビを振る特別措置をとったり、来日3年以内の外国籍の生徒には辞書の持ち込みも許可したりする措置も実施している。

 それでも、12年の国語の平均点は都平均が69.5点だったのに対し、たぶんかの生徒は15.8点。逆に英語は都平均が58.1点に対し、たぶんか生は76.9点だった。国語の試験では選択肢問題ぐらいしか得点が見込めず、例えばすべての選択肢で「ア」と選ぶなど、得点が出るよう指導する人もいる。

 2月、川崎市のコミュニティー施設「ふれあい館」に足を運んだ。社会福祉法人の青丘社が運営する日本語学級を見学するためだ。同法人では来日して3年以内の小・中学生を対象に、初期の日本語指導と教科学習の指導を行っている。

 受験シーズンとあって、中学生のクラスでは面接の練習が行われていた。フィリピン人の女子生徒は、面接官に夢を語った。
「私はフィリピンで生まれ育ち、中学1年で日本に来ました。そのため、日本語と漢字の勉強を一生懸命やりました。高校入学後も日本語の勉強を頑張って、将来はキャビンアテンダントになりたいです」

 女子生徒は定時制高校を受験するという。ふれあい館の黄浩貞(ファンホジュン)さんは、こう話す。

「全日制の普通科高校の試験は特別枠を除き5教科ですが、定時制なら国語、数学、英語の3教科。外国につながる子どもたちの受け皿になっています」

 外国人が多く暮らす自治体で構成する「外国人集住都市会議」の調査では、外国籍生徒の進路の21%が定時制高校だった。理由は受験のしやすさだけではない。

「2千円の月謝を払えない家庭もあります。様々な事情を抱えた家庭が多く、働きながら学べることも、人気になっている理由でしょう」(黄さん)

 日本語指導が必要な子どもたちにとって高いハードルとなる高校受験。それを乗り越えたとしても、卒業までの道は険しい。日本語指導の必要な高校生の中退率は9.6%と、全高校の1.3%と比べ、相当高い。ここでも日本語力がネックになっている。外国籍の生徒が多く通う定時制高校教諭は、

「コミュニケーションがとれないため友達ができずに孤立し、中退するケースは多い」

 日本語指導が必要なのに、公教育につながれずにいる子どもたち。外国籍の子どもの就学に詳しい小島祥美・愛知淑徳大学准教授はこう指摘する。

「政府は『希望すれば学ぶ機会は保障される』という立場だが、恩恵的に許可されているに過ぎず、保護者が就学手続きをしない限り、子どもは不就学の状態におかれてしまうのです」

 そのうえで小島准教授は「行政は、外国人への就学案内を徹底するべきです」と指摘する。

 外国人労働者の増加で日本語教育が必要な子どもたちは今後も増え続けていくだろう。政府は不就学児童の実態を受け、新年度からは義務教育年齢の子どもを把握する学齢簿の作成などに乗り出す見込みだ。

 多くのボランティアに支えられる外国籍児童らへの日本語指導現場への対策も必須だ。国家資格として日本語教師を創設する動きもあるが、

「日本語教師の給与水準は低く、食べられる資格にならなければ保育士のように使われずに終わってしまう」

 都内の日本語学校に勤める日本語教師はそう切り捨てた。(ジャーナリスト・澤田晃宏)

※AERA 2020年3月9日号より抜粋

0 件のコメント:

コメントを投稿