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KSB瀬戸内海放送
親が外国出身者だったり国外で生まれたりした「外国にルーツを持つ子どもたち」の高校進学についてお伝えします。日本語の指導が必要な生徒が増える中、国は、公立高校の入試で外国人生徒向けの特別枠の設置などを全国の教育委員会に求めています。岡山・香川の現状を取材しました。 【写真】チッさん「(Q.入試を控えた今の気持ちは?)怖いです」
■外国ルーツの子どもたちの「高校入試」 現状は? ミャンマー出身のエイン・ダラ・チッさん、18歳。2024年6月、年下のきょうだい2人と一緒に日本に来ました。社会情勢が不安定なことから母親が先に来日し、香川県丸亀市で介護の仕事をしています。 チッさんは来日前、1年間オンラインで日本語を学びましたが、十分ではありません。ミャンマーで中学を卒業しているため日本の中学校には編入できず、NPOが開いている教室に通っています。そして、1月の私立高校の入試に挑戦します。 (エイン・ダラ・チッさん) 「(Q.入試を控えた今の気持ちは?)怖いです。(Q.どんなところが怖い?)日本語。(Q.日本語の不安なところは?)漢字」 英語や数学の学力はありますが、国語の試験に加えて、日本語で書かれた各科目の問題文を理解できるかが課題です。 教えるのは元教員の池内道子さん。丸亀市の小・中学校で約10年間、外国にルーツを持つ子どもたちの指導にあたってきました。 (オアシスこくさい教室/池内道子さん) 「この子は学力があるなと思っても、高校入試に間に合わず、いつの間にか母国に帰ったという子も結構たくさんいます。やっぱり高校に行ってない子は親と同じ仕事で終わっている。それはそれでもいいんですけど、仕事の幅がなくて」 在留外国人の増加を受け、香川県でも日本語指導が必要な小中学生が2023年5月時点で160人いて、この10年で倍増しています。 文部科学省は2020年、公立高校の入試で外国人生徒を対象にした特別枠の設定や、試験科目の軽減、漢字へのルビ振りといった特別な措置をするよう指針を示し、2024年6月、改めて全国の教育委員会に通知しました。 それでも、調査によると2024年度の高校入試で特別枠を設けていたのは47都道府県中25の都府県で、中四国では広島県だけ。岡山県と香川県では、中学校での支援状況を考慮して漢字のルビ振りに対応することはありますが、特別枠は設置していません。 (香川県教育委員会 高校教育課/橘 正隆 課長補佐) 「近年、小中学校における外国人の在学者数が増加傾向にあるということを踏まえて、今後必要な制度については考えていきたい」 外国人生徒の公立高校入試について全国調査を行っている支援者は、特別枠の有無によって自治体間で支援の「格差」が広がることに懸念を示します。 (NPO法人 多文化共生教育ネットワークかながわ/高橋清樹 事務局長) 「特別な枠を作っている都府県については受け入れ枠の学校が増えたり、(入学後の生徒に)日本語指導と教科指導をちゃんと配慮して支援していくということもセットでやっていくようなことが、どんどんどんどん広がっている。一方で、特別募集枠がないところはなかなか改善されない。そのために、入学後の支援の方も全然進まない」 ミャンマー出身のチッさんが希望する私立高校の入試まで約1カ月。高校入学は日本での将来の夢に向けた第一歩です。 (エイン・ダラ・チッさん) 「勉強を続けて、大学まで行きたい。家族はここに住んでいますから、私もここで働きたい。(Q.どんな仕事がしたい?)カフェ。(Q.カフェのスタッフ?)スタッフじゃなくて、カフェのボスになりたいです」 ■全国の公立高校の入試 先進的な事例は? 全国の状況を見ると東京都では、2025年春の都立高校の入試で特別枠を設ける高校の数を8校から12校に増やすほか、「外国籍」という要件をなくし、日本語指導が必要な日本国籍の生徒も受験できるようにします。 また、愛知県では2026年4月、全国で初めて外国にルーツを持つ生徒を対象にした中高一貫校を開校します。そんな中、岡山市の私立の高校では2025年度から外国にルーツを持つ子どもたちへの支援に力を入れた通信制課程を始めます。 ■岡山学芸館高校で新たに支援拡充へ 岡山市東区にある岡山学芸館高校では10年ほど前から全日制課程の入試で外国ルーツの生徒に対し、中学校と相談の上で国語の試験を免除したり、英語と数学の問題文の漢字にルビを振ったりしてきました。 そして、放課後には日本語指導の先生による教室が毎日開かれ、生徒がそれぞれの能力に応じた教材で学ぶほか、日本語能力試験に備えた補習を受けることができます。 (中国出身/柳何霊さん[1年]) 「(Q.日本語の勉強はどうですか?)とってもいいです」 (ネパール出身/アチャリヤ・スミタさん[2年]) 「他のところではあんまり、日本語の勉強とかはできなさそうなので、放課後とかにやって、日本語の力を伸ばすことができるかなと思います」 2025年度から始まる通信制課程では、外国にルーツを持つ生徒の日本語学習をより充実させられるよう、1日3コマ分の選択学習の時間が設けられています。 (岡山学芸館高校/小笠原健二 副校長) 「日本語がうまくなることとか高校を卒業することがゴールじゃなくて、日本文化を理解し将来日本で永住するかもしれないですし、その時に自分の友達がいたり、育った学校があったり、得られた知識やスキルがあったりある意味では普通の高校生活が送れるって、とっても素敵なことだなと思っているので、将来は岡山のためになっていくんじゃないかなと私は思っています」 保護者の経済的な事情もあるため私立高校の独自の取り組みだけに任せるのではなく、公立高校でも支援を進め、入試の際に選択できることが望まれます。 少子高齢化によりさまざまな業種で人手不足が深刻化する中、将来、日本で働くことを希望する外国ルーツの子どもたちの学習やキャリア支援の充実が求められています。
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