Source:https://www.zakzak.co.jp/article/20240301-5MTX7BA3GZJCDIURZPCCVCL2MA/
東京・板橋区にある植村冒険館には、エベレストから冒険家・植村直己が取ってきた白っぽい小さな石が飾ってある。これは石灰岩で、海の底でできたものだ。山頂付近には貝の化石もある。つまりエベレストなどヒマラヤの山々は、かつて海底だったところが1万メートル以上も持ち上がったのだ。
この持ち上がりは、南からやってきたインドプレートと、ユーラシアプレートが押し合ってせり上がって起きたものだ。今でもインドプレートが押してきている。エベレストや、ヒマラヤの高さも、どんどん高くなっていっているのである。
インドプレートが北上している速さは年に5~7センチほどだ。5~7センチの速さとは、南海トラフ地震や、首都直下型地震に関係するフィリピン海プレートが日本に衝突して潜り込んでいっている速さよりは少し大きい。
そして、このプレートの衝突は地震も起こす。7万人の犠牲者を生んでしまった2008年の四川大地震(M7・9)や、7万人の犠牲者が出た05年のパキスタン大地震(M7・6)、ネパールでも15年の大地震以前にも、1934年にはM8・4の地震で1万人以上が死亡している。
こうしたヒマラヤ山脈の高地で発見があった。鉱物が堆積した鉱床の中に、およそ6億年前に存在した古代の海の名残りと思われる水が閉じ込められていたのだ。この水を分析した結果、炭酸カルシウムと炭酸マグネシウム両方が含まれていた。
ここで地球の歴史、全球凍結の話をしなければならない。
7億年前から5億年前の間に、「全球凍結」と呼ばれる氷河期(地球の歴史の中での大規模な氷河現象のひとつ)がやってきて、長期間、地球が厚い氷の層に覆われた。発見された鉱床は、全球凍結時代にさかのぼるもので、河川からの流入が少なかったために、堆積盆地には長期にわたってカルシウムが欠乏していたであろうことがわかった。
凍結していた間、海への流入がなかったため、カルシウムも入ってこなかった。こういう場合、より多くのカルシウムが沈殿すると、マグネシウムの量が増える。
この時期に形成されたマグネシウムの堆積物が結晶化するときに、その隙間の小さな孔(あな)の中に古代の海水を閉じ込めたのではないか。
これまで、過去に存在していた古代の海がすべて消滅してしまっていることから、理解できていなかったものだ。
■島村英紀(しまむら・ひでき) 武蔵野学院大学特任教授。1941年、東京都出身。東大理学部卒、東大大学院修了。北海道大教授、北大地震火山研究観測センター長、国立極地研究所所長などを歴任。著書多数。最新刊に『多発する人造地震―人間が引き起こす地震』(花伝社)。
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