2017年12月6日水曜日

「大国のはざま」で揺れるネパール 総選挙きょう第1回投票

Source: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171126-00000054-san-asia
11/26(日) 、ヤフーニュースより

 ■左派連携、親中政権誕生?懸念深めるインド

 ネパールの新憲法下で初となる下院選挙(総選挙)の第1回投票が26日、同国で行われる。選挙戦では共産系の2政党が協力することで一致。勝利すれば、中国への傾斜が一気に強まる可能性が高い。一方で、歴史的にも経済的にも関わりが深いインドの存在も無視できず、選挙結果によっては南アジア情勢に影響を与えかねない。ヒマラヤの小国は強国のはざまで揺れている。

 ◆「大勝、不可能ではない」

 「大勝を狙っている。今の情勢は不可能ではないと考えている」

 第2党・統一共産党最高幹部のクマル・ネパール元首相は産経新聞の取材に強気に話した。ネパール氏は街を練り歩きながら支持を呼び掛けたが、有権者からは「政治の安定が必要」「政府は雇用を生み出す必要がある」などと訴える声が聞こえた。

 選挙戦が一気に熱を帯びたのは10月に入ってからだ。統一共産党と第3党のネパール共産党毛沢東主義派(毛派)が「左派同盟」を結成すると発表した。

 離合集散が激しいネパール政界では共産主義を標榜(ひょうぼう)する政党が複数ある。統一共産党のイシュクル・ポカレル書記長は「党名は『リベラル』という意味で捉えてほしい」とくぎを刺すが、「中国寄り」(地元ジャーナリスト)との声は強く、同盟側が勝利なら親中政権誕生は避けられない。

 対するシェール・デウバ首相率いる第1党・ネパール会議派(NCP)は親インド住民「マデシ」の取り込みを狙う。若手指導者の一人、ガガン・タパ元保健相は「左派の連携には驚かされたが、われわれも選挙戦に自信がある」とこちらも手応えを口にした。

 ◆一帯一路協力、爆買い…

 ネパールは、同じくヒンズー教徒が多数派のインドと関係が深く、輸出入の相手先としてもトップだが、昨今、中国寄りの“赤色”が急速に濃くなっている。

 5月、中国が進める現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」に協力することで合意。中国の鉄道をカトマンズまで延伸する計画も持ち上がる。4月にはネパール軍と中国人民解放軍が初の合同訓練も行うなど接近は誰の目にも顕著だ。

 「中国人の観光客も圧倒的に増えた。インド人より中国人に稼がせてもらっている」と話すのは、カトマンズで土産物店を経営する男性(65)だ。仏像や絵画を手当たり次第、“爆買い”していくので店の売り上げは3年前の3、4倍になったという。

 そうした中国の影響力にインドは懸念を深めており、「ネパールの動向を注視している」(インド軍元幹部)状況だ。ネパールは今月13日に突然、中国企業と契約した水力発電所計画を中止したが、中国一辺倒ではない姿勢をインドに示したという指摘もある。

 政党の勢力争いと大国の思惑が混在する中、市民にとっては平均所得が年間800ドル(約9万円)という経済問題の方が深刻だ。候補者の遊説を見ていた主婦、ラムケシャリ・シェスタさん(60)は、4人の孫が誰も学校に通えていないという。「何党でも中国でもインドでもいい。生活を楽にしてほしい」とつぶやいた。(カトマンズ 森浩)

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