Source: https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170926-01397293-sspa-soci
9/26(火)、ヤフーニュースより
9/26(火)、ヤフーニュースより
「もういらないって言ったらいらないんだ。何度言えば分かるんだ。そんな巨大な絨毯を長期旅行者の私が買って、一体どうするというんだ!」
インドの客引きがしつこいというのは、ガイドブックなどを見れば誰でも知ることができる情報だ。しかし、その恐ろしいほどの鬱陶しさというのは訪れた人にしか分からないもので、想像をはるかに越えてくる。
「ヘイ、フレンド。この絨毯の価値はお金じゃ買えないんだぜ。4000ルピーでどうだ? ところでお前の家にソファはあるか?」
とにかく売りつけることだけが重要で、こちらの都合など知ったことではないのだ。仮に買ったとしても、「ところで」と次の商品が出てくる。買わなければどこまでも付いてくる。なんとか振り切ったとしても、10メートル先には「ヘイ、フレンド!」と手を振る別のインド人が待っている……。こんな感じで声をかけてくるインド人にロクなやつはいないのだが、ほんのわずかな確率で味わい深い人間と出会えることも事実。打率でいうと、0割3分くらいのヘボバッターだが、これがあるからインドの街歩きはやめられない。
今回は、東南アジアを1年以上バックパッカーとして旅していた筆者が、インドで出会った愉快な詐欺師たちを紹介したい。
◆魔法のオイルの実演販売
インド南部にある大都市チェンナイ。駅前を歩いていると、野次馬に囲まれたインド人商人が「OIL」や「PAIN」がどうのこうのと熱弁していた。
「お前、インド人じゃないな! こっちへ来い!」
ギャラリーに1人は外国人が必要だということで、半ば強制的に輪に加わることに。どうやら“塗るだけで全身の痛みがキレイサッパリなくなる”という魔法のオイルを売っているようだ。
日本の常識で考えれば、「薬事法は大丈夫?」と心配になってしまうが、ここはインド。店頭に並べられたアロエや薬草を火であぶり、さらにグツグツ煮詰めてオイルを抽出。そのオイルを糸に垂らしてみたり、変形しきったアロエにかけてみたりと、なにかやっている感は満載である。
オイルは緑・赤・黄と全部で3つあり、順番に塗ることで効果が発揮されるらしい。実演販売ということで、筆者も腰にオイルを塗ってもらったのだが……。赤のオイルを塗られた瞬間、皮膚が信じられないほど焼けるように熱い! 悶える筆者を見て、「いま、効いているところだ」とギャラリーに向かって自慢気に解説する商人。黄色のオイルはまだ塗ってないけどもう効いているのか? その赤のオイルを何故か顔面に塗られた不運なインド人は、「なんてことしやがる!」と吐き捨て、頭を抱えながら小走りでその場を去っていった。
◆「君に似合うTシャツを知っている」
カルカッタにある広場でクリケットにいそしむインド人たちを眺めていると、同じく観戦中のインド人が「なにか欲しいものはある?」となんの前触れもなく声をかけてきた。彼の名前はアミット。
ちょうどTシャツを買おうと思っていたところだったのでそう伝えると、「君に似合うTシャツを知っている」と目を輝かせて「ついてこい!」と声を張り上げながら走り出した。到着したのはオールドマーケットの中にある布地屋だった。
「マスターが来るまで時間があるから、それまで街を案内してやる」
アミットは肉市場、魚市場、野菜市場をぐるりと一周したあと、1杯のチャイと1本のタバコまでごちそうしてくれた。途中、豊富な品揃えでTシャツを売っている露店があった。筆者が商品を手に取ろうとした瞬間、「こんな汚いもの買うもんじゃない!」と怒り出すアミット。まだ何も言っていないのに……。
店に戻ってからさらに待つこと20分、ようやくマスターが到着した。日本語が堪能なマスターの第一声はこうだった。
「うちは布地屋なのでTシャツなんか置いていないですよ」
アミットはバツの悪そうな顔をしながらチップを要求することもなく去っていった。アミットは一体何がしたかったのだろうか。
◆「オレはカルカッタで1番のワル」
カルカッタのサダルストリートには、今日も怪しいインド人たちが日本人を標的に詐欺を働いている。その中でもひと際怪しいのが、日本語ペラペラな自称旅行代理店の「コンシェルジュ」。
「お前日本人か? 千葉の清水公園で働いていたオレの友達が今日帰ってきたんだよ!」
東京や大阪などの大都市ではなく、千葉というなんとも絶妙なチョイス。調子に乗った日本人が「清水公園なら信じるぞ」と吹き込んだのだろうか。裏でその友達に聞いてみると、清水公園から帰ってきたのは2年前だという。ツメが甘いが、とにかく清水公園だけは外せないようだ。
またあるときは、「明日からネパールに行ってくるんだ。今日でお別れだな、マイフレンド」と肩を組みながら記念撮影をするコンシェルジュ。しかし次の日もその次の日も何事もなかったかのように街を闊歩するコンシェルジュ。ネパールへ行くのは5日後らしい。こいつの言っていることは全部ウソだ。カルカッタ歴が長いという日本人女性からは「あいつには気をつけろ」と忠告を受けた。関西弁がペラペラのインド人サトシ(※サダルストリート・サトシで検索してみよう)も、「あいつホンマ、悪い奴やで。あいつみたいなのがおるからおれも疑われんねん」と不快感をあらわにしていた。
そんなコンシェルジュと、ルーフトップのバーまでビールを飲みに行ったときのことだ。屋上へと上るエレベーターの中には電気や非常ストップ用などのボタンがある。そして、コンシェルジュは突然エレベーターを真っ暗にしてこう言った。
「おれはカルカッタで1番のワルなんだぜ? こんなところで2人きりになって大丈夫なのか?」
電気を付け「驚いたか?」と、はしゃぐコンシェルジュ。しかし、その後いくら付き合っても騙そうとする素振りは1つも見せない。コンシェルジュが詐欺師であることはほぼ間違いないのだが、全旅行者から金を巻き上げるつもりでもないようだ。
「詐欺をするならまずは日本語の勉強からだ」と、インドのあるぼったくりガイドは言っていた。しかし、そんな彼らでも、はじめから詐欺師として付き合えば、旅はもっと刺激的で楽しいものになるかも?
<取材・撮影・文/國友公司>
インドの客引きがしつこいというのは、ガイドブックなどを見れば誰でも知ることができる情報だ。しかし、その恐ろしいほどの鬱陶しさというのは訪れた人にしか分からないもので、想像をはるかに越えてくる。
「ヘイ、フレンド。この絨毯の価値はお金じゃ買えないんだぜ。4000ルピーでどうだ? ところでお前の家にソファはあるか?」
とにかく売りつけることだけが重要で、こちらの都合など知ったことではないのだ。仮に買ったとしても、「ところで」と次の商品が出てくる。買わなければどこまでも付いてくる。なんとか振り切ったとしても、10メートル先には「ヘイ、フレンド!」と手を振る別のインド人が待っている……。こんな感じで声をかけてくるインド人にロクなやつはいないのだが、ほんのわずかな確率で味わい深い人間と出会えることも事実。打率でいうと、0割3分くらいのヘボバッターだが、これがあるからインドの街歩きはやめられない。
今回は、東南アジアを1年以上バックパッカーとして旅していた筆者が、インドで出会った愉快な詐欺師たちを紹介したい。
◆魔法のオイルの実演販売
インド南部にある大都市チェンナイ。駅前を歩いていると、野次馬に囲まれたインド人商人が「OIL」や「PAIN」がどうのこうのと熱弁していた。
「お前、インド人じゃないな! こっちへ来い!」
ギャラリーに1人は外国人が必要だということで、半ば強制的に輪に加わることに。どうやら“塗るだけで全身の痛みがキレイサッパリなくなる”という魔法のオイルを売っているようだ。
日本の常識で考えれば、「薬事法は大丈夫?」と心配になってしまうが、ここはインド。店頭に並べられたアロエや薬草を火であぶり、さらにグツグツ煮詰めてオイルを抽出。そのオイルを糸に垂らしてみたり、変形しきったアロエにかけてみたりと、なにかやっている感は満載である。
オイルは緑・赤・黄と全部で3つあり、順番に塗ることで効果が発揮されるらしい。実演販売ということで、筆者も腰にオイルを塗ってもらったのだが……。赤のオイルを塗られた瞬間、皮膚が信じられないほど焼けるように熱い! 悶える筆者を見て、「いま、効いているところだ」とギャラリーに向かって自慢気に解説する商人。黄色のオイルはまだ塗ってないけどもう効いているのか? その赤のオイルを何故か顔面に塗られた不運なインド人は、「なんてことしやがる!」と吐き捨て、頭を抱えながら小走りでその場を去っていった。
◆「君に似合うTシャツを知っている」
カルカッタにある広場でクリケットにいそしむインド人たちを眺めていると、同じく観戦中のインド人が「なにか欲しいものはある?」となんの前触れもなく声をかけてきた。彼の名前はアミット。
ちょうどTシャツを買おうと思っていたところだったのでそう伝えると、「君に似合うTシャツを知っている」と目を輝かせて「ついてこい!」と声を張り上げながら走り出した。到着したのはオールドマーケットの中にある布地屋だった。
「マスターが来るまで時間があるから、それまで街を案内してやる」
アミットは肉市場、魚市場、野菜市場をぐるりと一周したあと、1杯のチャイと1本のタバコまでごちそうしてくれた。途中、豊富な品揃えでTシャツを売っている露店があった。筆者が商品を手に取ろうとした瞬間、「こんな汚いもの買うもんじゃない!」と怒り出すアミット。まだ何も言っていないのに……。
店に戻ってからさらに待つこと20分、ようやくマスターが到着した。日本語が堪能なマスターの第一声はこうだった。
「うちは布地屋なのでTシャツなんか置いていないですよ」
アミットはバツの悪そうな顔をしながらチップを要求することもなく去っていった。アミットは一体何がしたかったのだろうか。
◆「オレはカルカッタで1番のワル」
カルカッタのサダルストリートには、今日も怪しいインド人たちが日本人を標的に詐欺を働いている。その中でもひと際怪しいのが、日本語ペラペラな自称旅行代理店の「コンシェルジュ」。
「お前日本人か? 千葉の清水公園で働いていたオレの友達が今日帰ってきたんだよ!」
東京や大阪などの大都市ではなく、千葉というなんとも絶妙なチョイス。調子に乗った日本人が「清水公園なら信じるぞ」と吹き込んだのだろうか。裏でその友達に聞いてみると、清水公園から帰ってきたのは2年前だという。ツメが甘いが、とにかく清水公園だけは外せないようだ。
またあるときは、「明日からネパールに行ってくるんだ。今日でお別れだな、マイフレンド」と肩を組みながら記念撮影をするコンシェルジュ。しかし次の日もその次の日も何事もなかったかのように街を闊歩するコンシェルジュ。ネパールへ行くのは5日後らしい。こいつの言っていることは全部ウソだ。カルカッタ歴が長いという日本人女性からは「あいつには気をつけろ」と忠告を受けた。関西弁がペラペラのインド人サトシ(※サダルストリート・サトシで検索してみよう)も、「あいつホンマ、悪い奴やで。あいつみたいなのがおるからおれも疑われんねん」と不快感をあらわにしていた。
そんなコンシェルジュと、ルーフトップのバーまでビールを飲みに行ったときのことだ。屋上へと上るエレベーターの中には電気や非常ストップ用などのボタンがある。そして、コンシェルジュは突然エレベーターを真っ暗にしてこう言った。
「おれはカルカッタで1番のワルなんだぜ? こんなところで2人きりになって大丈夫なのか?」
電気を付け「驚いたか?」と、はしゃぐコンシェルジュ。しかし、その後いくら付き合っても騙そうとする素振りは1つも見せない。コンシェルジュが詐欺師であることはほぼ間違いないのだが、全旅行者から金を巻き上げるつもりでもないようだ。
「詐欺をするならまずは日本語の勉強からだ」と、インドのあるぼったくりガイドは言っていた。しかし、そんな彼らでも、はじめから詐欺師として付き合えば、旅はもっと刺激的で楽しいものになるかも?
<取材・撮影・文/國友公司>
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